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家族信託とは?メリット・デメリット&手続きの流れをわかりやすく解説

query_builder 2024/04/29
コラム
家族信託とは

「子どもに財産を残したい」「親の財産管理が心配」といった場合は、家族信託を検討してみましょう。少子高齢化社会の日本において、「適切な財産管理に期待できる」として注目される方法です。

 

今回は、家族信託の基本的な知識だけでなく、メリット・デメリットも併せて解説します。手続きの流れもわかりやすく解説するので、家族信託を始める際は参考にしてみてください。

 

「家庭の状況にマッチしているか」「財産管理におけるリスクを減らせるか」などを見ていきましょう。

 

家族信託とは?

 

家族信託とは、自身が所有する財産(不動産や預貯金など)の管理を、信頼できる人物に任せる財産管理手法の一つです。たとえば、認知症が原因で自ら財産管理できなくなったとき、家族信託を利用していれば資産凍結や運用トラブルなどを防げます。

 

次項からは、家族信託の仕組や注目される背景について見ていきましょう。

 

家族信託の仕組み


家族信託は以下の3者間で行われます。

 

<家族信託を行う人について>


・委託者:財産管理を任せる人
・受託者:財産を管理する人
・受益者:財産を受け取る人
 

家族信託とは

受託者と受益者は同じ人に任されるケースも多く、主に子どもが担います。委託者は自分の身体が元気なうちに家族信託を行い、受託者に財産の管理を任せます。財産から利益が出た場合、その利益は受益者に渡る仕組みです。

 

あらかじめ財産管理を任せておけば、委託者の財産が凍結されるリスクや遺産相続で揉める心配もありません。

 

家族信託の手続きにかかる費用


家族信託の手続きにかかる費用は次のとおりです。

 

【費用の内訳】

項目 費用目安 詳細
契約書の作成費 信託財産の評価額の0.3~1% 契約書作成を依頼する専門家への報酬
公正証書の作成費 5,000円~ 信託財産の金額により変動
不動産登記の費用 5~10万円 登記の代行を依頼する専門家への報酬
登記にかかる登録免許税 土地:固定資産税評価額の0.3%
・建物:固定資産税評価額の0.4%
不動産登記に必須の税金


※公正証書:証拠力のある公的な文書

 

公正証書の作成は必須ではないものの、契約内容の信憑性を高めたい場合は作成しましょう。費用の合計は50~100万円が目安なので、予算を組む際は参考にしてみてください。

 

家族信託が注目される背景


家族信託が注目される理由は、日本の少子高齢化問題と認知症へのリスクに備えるためです。国内の高齢者数は年々増加しており、厚生労働省の予測では2040年に4,000万人近くに達するとの見通しです。認知症患者の数も増加し、2025年には約700万人に達すると予測されています。


※出典:厚生労働省老健局 認知症施策の総合的な推進について

家族であっても、親の財産を勝手に管理することはできません。認知症になった場合、預貯金などの財産は実質的に凍結されます。こうしたリスクを防ぐため、家族信託への注目は高まっています。

 

実際、土地の信託登記数(信託に必要な登記手続きの数)は年々増加を続けており、家計調査のデータによれば、2019年~2022年にかけて10,071件→17572件へ増加しました。
※出典:「家計調査結果」(総務省統計局)(2023年8月8日に利用)

 

家庭の状況にもよりますが、残すべき財産がある場合は家族信託の利用も検討しましょう。

 

家族信託を利用する6つのメリット


家族信託を利用するメリットを6つ解説します。親・子ども双方にとってメリットがあるのか、理想的な財産管理ができるのか、次項から詳しく見ていきましょう。

 

①財産管理の自由度が高い


家族信託は成年後見制度よりも自由度が高く、契約の範囲内であれば不動産の売買などの資産運用ができます。成年後見制度とは、何らかの理由で本人が財産管理できない場合、代理人(後見人)がサポートする制度です。この制度は財産維持・管理ができるものの、投資や運用、安易な処分などは認められていません。

 

一方、家族信託の場合、契約内に財産の運用や処分について記載していれば、受託者は投資や運用も可能です。財産管理をスムーズに進められる点において、家族信託はメリットがあります。

 

②資産凍結を回避できる


家族信託であれば事前に財産の管理者を決められるため、財産所有者が認知症になっても凍結を回避できます。財産の所有者が認知症になった場合、本人の意思表示が難しくなるため、預貯金などの資産は凍結状態(本人以外は動かせない)となります。

 

しかし、家族信託を利用して受託者を決めておくことで、本人以外であっても財産を管理可能です。財産相続を適切に行うためにも、家族信託は有効な手段と言えます。

 

不動産の共有問題を予防できる


不動産の管理・処分権限を受託者1人に集約させると、不動産の共有問題を予防できます。不動産を複数人で共有管理している場合、全員の意思表示がなければ売却や修繕ができません。何らかの原因で1人でも意思能力を失ってしまうと、不動産を動かせなくなります。

 

しかし、家族信託で受託者を1人に集約しておけば、上記のようなリスクを回避できます。受託者を1人、受益者を複数人として契約することで、利益の共有も可能です。

 

兄弟間で財産を共有する場合、家族信託の利用も検討しましょう。

 

④破産した際は差し押さえを免れる


家族信託には差し押さえを免れる機能(倒産隔離機能)があります。家族信託を受けた財産は「誰のものでもない財産」として扱われるため、仮に委託者・受託者が破産したとしても差し押さえの対象にはなりません。これは倒産隔離機能と呼ばれ、自身の財産を守れる手段の一つです。

 

万が一の事態に備えられるため、不動産などの財産がある場合は家族信託を検討してみてください。

 

⑤委託者の意思に準じて財産を相続できる


家族信託は委託者の意思により、相続順位の指定ができます。遺言書では二次相続以降の指定ができず、故人の遺志は一時相続までしか受け継がれません。二次相続とは、最初に遺産を受け取った人(配偶者など)が亡くなり、その遺産を次の誰か(子どもなど)に相続させることです。

 

しかし、家族信託は二次相続以降も指定して財産を相続できるので、故人の意思を尊重できます。子どもや孫世代へ財産を適切に相続させたい場合、家族信託が有効です。

 

⑥遺言書の代わりとして活用できる


家族信託は遺言書の代わり(遺言代用信託)としても活用できるので、厳格な方式に従うことなく遺言書を作成できます。遺言書は、所定の方式に則って作成したもののみ法的効力が有効です。

 

本来であれば厳格な手続きに則る必要があるものの、家族信託は契約を行うため、遺言書の形式に従う必要はありません。遺言書を残せていない場合でも有効なので、遺産相続の意思がある人は家族信託も含めて検討しましょう。

 

家族信託を利用する5つのデメリット・注意点


家族信託を利用するデメリット・注意点を5つ解説します。家族信託の手続きを行う際、トラブルへ発展しないよう事前に目を通しておきましょう。

 

①家族・親族間でトラブルに発展する可能性がある


「受託者の財産管理がずさん」「誰にも相談せずに受託者を決めた」といった場合、家族・親族間でトラブルに発展する可能性があります。受託者は財産管理における大きな権限を持ちます。

 

受託者の判断に任せて管理が行われるため、管理能力が不十分な場合、財産の価値が低下するかもしれません。さらに、兄弟が複数名いるにも係わらず、親が勝手に1名の受託者を決めてしまうと、他の兄弟は不公平に感じるでしょう。

 

上記のようなトラブルを生まないためにも、信頼のおける人を選出し、家族・親族で話し合う場を設けることが大切です。

 

②必ずしも受託者が見つかるとは限らない


受託者は財産管理の責任が重く、指名しても引き受けてもらえない恐れがあります。家族信託は委託者・受託者、双方の合意があって成立する契約です。

 

しかし、受託者は財産管理や委託者への状況報告など、これまでにない手間が発生するので、引き受けてもらえないケースもあります。家族信託は家族・親族以外の第三者にも受託者を指定できるため、以下の方法も検討しましょう。

 

<受託者が見つからないときの対処法>


・家族や親族以外で信頼できる人を探す
・受託者の負担が軽減されるように契約内容を見直す
・信託サービスを利用する(専門家への相談、財産を預けるなど)

相手が士業(司法書士や弁護士)の場合、受託者として指定できないので注意しましょう。

 

③子どもの意向だけでは進めにくい


前述したとり、家族信託は双方の合意で成り立つ契約なので、子どもの意向だけでは進められません。両親や祖父母のため、財産を維持する目的で家族信託を進めようとしても、「家族信託を知らない」「財産を失うかも」といった理由で断られる恐れがあります。

 

子どもの意向で家族信託を進める際は、両親や祖父母に理解を深めてもらい、メリット・デメリットも併せて説明しましょう。家族信託すべき理由に納得してもらうことが大切です。

 

④節税対策の効果はない


家族信託に節税対策の効果はなく、受益者は贈与税や相続税の支払いが必用です。家族信託の仕組みには税金の優遇措置が含まれておらず、以下の税金を支払う必要があります。

 

<支払いが発生する税金>


・贈与税:委託者と受益者が異なる場合に発生する
相続税:委託者=受益者が死亡し、受益者が第三者へ引き継がれたときに発生する
・譲渡所得税:財産から得られた利益に対して発生する

家族信託を始める際は、上記のような各種税金についても話し合いに盛り込みましょう。

 

⑤身上監護は含まれない


家族信託は財産の管理・処分の権利を託す契約なので、身上監護には対応していません。身上監護とは、本人(委託者)の身上に係る法的な手続きを代理することです。たとえば、介護施設への入居や病院での入院手続きなどが挙げられます。

 

契約内に身上監護を含むこともできますが、状況によっては本人の意思表示が必用なケースもあります。そのため、身上監護も任せたい場合は成年後見制度を利用し、家族信託との併用も検討しましょう。成年後見制度については「①財産管理の自由度が高い」でも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

家族信託を始める際に準備すべきこと


家族信託を始める際は以下の準備を進めて、家族・親族の合意が得られるようにしましょう。

 

<家族信託の準備>


・信託財産を整理する(金銭や不動産、株式など金銭的価値のあるもの)
・受託者を選ぶ
・信託契約の目的を明確する
・財産管理の監督役(信託監督人)を見つける

受託者を選ぶ際は、家族・親族間での話し合いも行いつつ、信頼できるかどうかも判断しなければなりません。信託財産への理解が深ければ、適切な財産管理に期待できます。さらに、信託の目的が明確になっていれば、契約内容を検討する際の基準となります。

 

また、受益者への利益が正当に分配されるか心配な場合は、監督役(信託監督人)も設けておきましょう。信託監督人は司法書士や弁護士などの専門家にも依頼できます。

 

家族信託の手続き4ステップ


家族信託の手続きは、以下4つのステップで行います。

 

<手続きの流れ>


1.信託契約を締結:委託者・受託者・受益者の3者間で契約内容を取り決める


2.信託用口座を開設:財産管理を行うための専用口座を開設する


3.不動産がある場合は信託登記を行う:不動産の名義を変更する


4.家族信託の運用スタート:受託者による財産管理を始める

 

口座開設の際は、生活用口座と別に専用口座を開設しましょう。財産管理の収支が明確になり、あとからトラブルが起きにくくなります。

 

また、契約内容や信託登記に不安がある場合は、専門家(弁護士や司法書士など)への相談も検討してください。家族・親族間でのトラブルを避けられるよう、十分に話し合える時間を作ることも大切です。

 

まとめ


家族信託は自分以外の誰かに財産管理を任せることで、財産を守り相続できる方法です。株式や預貯金はもちろん、不動産も信託財産の対象なので、財産の自己管理が難しいと感じたときは家族信託を検討しましょう。

 

「株式会社シンシアリーホームズ」では、不動産相続に関するご相談も受け付けております。「どのように財産をわけるべきか」「ベストな売却方法はどれか」など、お気軽にご相談ください。

 

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